第25話 夜の街の掟
今の時代は条例などで厳しくなりましたが、私がホストをしていた当時は、キャッチといってまだ店が暇な時間や、営業前、営業後などに店の外で女性たちに声をかけて店にお客さんを呼び込む事をしょっちゅうしておりました。
それまでナンパすらした事もない自分が、初めは恥ずかしいというか、なかなか女の子に声をかけるなんて得意ではなかったですが、仕事の為にそうしなければならず、だいぶ鍛えられたように思います。おかげでキャッチでほとんどのお客さんを獲得していたように思います。
これは、ある日の営業中にキャッチに歌舞伎町に出ていた時の出来事です。いつものように歌舞伎町のど真ん中にある風林会館の前で、歩いている女性に声をかけていたその時、背後から「カッカッカッ」と革靴の音がして、こちらに寄ってくる何者かの気配が、、なんか嫌な予感がして、血の気が引いたのを覚えています。
「おい、どこの店のもんだ?」恐る恐る振り向くと、スーツをビシッと着こなしたコワモテのお兄さんが集団でいました。もうどんな人なのか一発でわかる風貌です。こちらも2~3人位でキャッチしていましたが、その人達を前にしたら、素直に答えるしかなく。
その時一緒にいた店の先輩が対応して、その15分後ぐらいには、そのお兄さん達は、うちの店の一角のボックスシートに陣取って、座っておりました。まだ営業中のしかも、他のお客さんがいる中。女性専用のホストクラブなのに、男の集団がいるのは異様な光景でした。しかもその筋の方々が。店のマネージャーや主任が対応しておりました。
なぜ、そのお兄さん達は店に押しかけてきたのかというと、要はこの店はこの歌舞伎町で誰に断ってキャッチしたり営業してるんだと、この店は何かトラブルなんかあったら、どうするんだと。夜の街にはよくある、みかじめ料というやつですね。何かあったら面倒見るから、ケツを持つからと。お兄さん達にとってはそれが仕事である訳ですからね。
それまで、うちの店はそのような方とは付き合いが無かったようで、今の時代はだいぶ厳しくなったでしょうから分からないですが、当時はありましたね普通に。
まあ、夜の街ですからね、しかも歌舞伎町。この世界は色々なことがあるんだなあ~と思いました。この他にもまだありましたが。
つづく