父の転落のはじまり
私の父は自衛官でした。部下が何百人といた幹部まで登りつめて退職を迎える事となります。自衛官の定年は早くて階級によりますが、だいたい53歳ぐらいでしょうか、まだまだ働き盛りですね。
うちの父も、まだ若くして定年を迎えることになり、そうすると地元の企業に就職することに。田舎の町工場といったかんじの社員もごく僅かな鉄工所でした。
そこである事が。
うちの父がその鉄工所の社長にお金を無心されました。父には自衛官を定年退職した際に出た結構な金額の退職金がありましたから。
父は真面目でお人好しで、困っている人がいたり、頼られると出来る事はしてあげる人であったと思います。その時も長年に渡り築き上げてきた、苦労の賜物である結構な金額であったと思う退職金を、そっくりと貸してしまいました。
その鉄工所は元々経営もうまくいってなかったのでしょう。その後いつの日か倒産する事となり、父の退職金は戻ることなく、一瞬にして水の泡となり。
倒産したら返さなくてもいいとは、向こうにとっては都合のよいことでも、貸した側にとってはたまったものではありません。そのようになってしまった父の落胆さといったら、想像を絶するものがあります。もし自分が同じ経験をしたとしたら、間違いなく精神的に病むことでしょう。
そのあたりからでしょうか、酒などそんなに好きではなかった父が酒を飲みだして、そして段々と量も増えていきました。
つづく